【万が一の時のために知っておこう】住宅瑕疵担保責任保険のこと
はじめに
新築住宅の購入、取得は人生において最大の買い物と言えるでしょう。「家を買った後、もし問題が見つかったらどうすればいいの?」という不安を抱かれる方もいらっしゃると思います。
そのような万が一の場合から、住宅購入後に住宅の取得者を守る制度が「住宅瑕疵(かし)担保責任保険」です。これは住宅購入後に瑕疵が見つかった場合、住宅の取得者に対する保険金が支払われ、修補の費用に充てることが出来るものです。今回は、これから住宅の購入をお考えの際に知っておいて損はない、住宅瑕疵担保責任保険についてのご説明をいたします。
新築住宅における「瑕疵」について
そもそも「瑕疵」とは?
瑕疵担保責任保険の中の「瑕疵」とはそもそも何を意味するのでしょう?
瑕疵とは、「一般的には備わっているにもかかわらず本来あるべき機能・品質・性能・状態が備わっていないこと」を指します。
これでもちょっと分かりづらいのですが、簡単に言うと「傷」「欠陥」「不具合」になります。例えば「壁に穴が空いている」などは普通に気付きますが、中には見えない、気づかない欠陥や不具合も起こりえます。住宅における瑕疵としてよく起こるものとして
●雨漏り・水漏れ
●木造部分(柱や床など)の傷や腐食
●蟻害(シロアリによる被害)
●給排水管の破損
などが挙げられます。これらは住み始めてしばらく時間が経ってから表面化する不具合が多く「隠れた瑕疵」と言われます。
住宅瑕疵担保責任保険とは?
住宅取得後の瑕疵から、取得者を守るための制度
住宅購入後に明らかとなった瑕疵から住宅の取得者を守るため、平成12年4月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、建築会社などの事業者は建築した住宅を引渡してから10年間、瑕疵担保責任を負わなければならなくなりました。
瑕疵担保責任とは、確認してもわからないような欠陥が住宅にあった場合に、住宅を供給した事業者側が負う責任のことです。
しかしながら、瑕疵担保責任が義務付けられていても、万一の時に事業者側が責任を果たすための資金を持っていなくては意味がありません。そのため、平成21年に「瑕疵担保履行法」が施行されました。この法律により、事業者側は瑕疵担保責任を果たすための資金を確保しなければならなくなりました。
住宅事業者の資力確保の義務と方法
事業者側に義務付けられた資力確保の方法は大きく2種類あります。一つ目が「住宅瑕疵担保責任保険」への加入です。
事業者側が国土交通大臣指定の保険会社と保険契約を結び、住宅瑕疵担保責任保険に加入する形です。
もう1つ「保証金の供託」という資金確保の方法もあります。こちらは、事業者が供給した新築住宅に応じた額の保証金を法務局などの供託所へ10年間預ける形になります。
住宅瑕疵担保保険制度ができた背景
住宅事業者の資力不足や倒産による、瑕疵修補の不履行を防ぐ
新築住宅を建てて、引渡し後に瑕疵が見つかったとき、住宅の取得者側は事業者側へ瑕疵担保責任による修補費用などの請求をすることができます。しかし前項の通り、事業者側に責任を履行するだけの資金がなければ修補費用などの支払いをすることは出来なくなります。
仮に事業者側に資金がない状況になると、新築住宅の瑕疵は修補されることなく、そのまま放置される危険性が生じます。また、事業者が倒産してしまった後に瑕疵が発覚した場合には、住宅の取得者側は瑕疵担保責任による修補自体を請求することすら出来なくなります。そんな状態では、新築住宅を購入するにはあまりにリスクが大きく、住宅を購入することが大変難しいものになります。
そこで、住宅を供給した事業者側が資金不足に陥ったり、倒産した場合などでも、住宅の取得者側が瑕疵の修補などの補償を受けることが出来るように、住宅瑕疵担保責任保険が創設されました。
住宅を供給する事業者が新築住宅の請負契約をする際には、契約書に瑕疵担保責任保険への加入の有無を表示しなければなりません。また、住宅の取得者は請負契約の際に住宅瑕疵担保責任保険の内容を確認することができます。
さらに新築住宅の工事が完了し、引渡しの際には住宅の取得者は事業者から瑕疵担保責任保険の契約に関する書類を交付して貰うことが出来ます。
住宅瑕疵担保責任の範囲について
瑕疵担保責任の適用範囲は定められている
では新築住宅の供給をする際、事業者側は住宅瑕疵担保責任を負うことになるのですが、事業者側が責任を負う瑕疵の範囲はどこまでになるのでしょうか?
前述の「瑕疵担保履行法」上では、「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の侵入を防止する部分」についての瑕疵のみ、事業者側は10年間瑕疵担保責任を負うものとなっています。
この「構造耐力上主要な部分」にあたるのは、「住宅の骨格となる場所」のことであり、屋根瓦、柱、壁、床などを指します。また住宅の床下の土台や基礎なども構造耐力上主要な部分に該当します。
上記の部分などに瑕疵、例として変形が見られたり、傷があったりした場合に事業者は住宅瑕疵担保責任を負います。
「雨水の侵入を防止する部分」は、住宅の外壁やその内部、屋根、開口部、屋内にある排水管などを指します。これらの部分の防水性能が足りず、雨漏りや水漏れを起こしやすい状態であったり、排水管の排水機能に不具合が生じた結果、雨水を排出しにくくなる状況なども同様に瑕疵があると認められ、事業者は住宅瑕疵担保責任を負うことになります。
もし瑕疵が見つかった場合には
瑕疵が見つかったら住宅瑕疵担保責任保険の保証を請求できる
仮に、住宅瑕疵担保責任保険に加入している新築住宅で、前項の「構造耐力上主要な部分」または「雨水の侵入を防止する部分」に瑕疵が見つかったとします。
該当する新築住宅の引渡しから10年以内に発見された瑕疵の場合には、住宅瑕疵担保責任保険の対象となります。従って、支払われる保険金の範囲内で瑕疵に対する補修費用を補償してもらうことが出来ます。
住宅瑕疵担保責任保険の保険金は、修補費用の他にも損害賠償の費用、裁判になったときの裁判手続費用、瑕疵の修補のための調査にかかる費用、修補が完了するまで住宅に住むことが出来ない場合の仮住まい費用などに支払われる場合もあります。
住宅瑕疵担保責任保険の請求の流れ
それでは、住宅瑕疵担保責任保険の保険金の支払いはどのような手順で行われるのかをご説明します。
①お住まいの新築住宅から、住宅瑕疵担保責任保険の対象となる瑕疵を見つけた場合、住宅の取得者は住宅を供給した事業者に対して「瑕疵担保責任による修補請求」を行います。
②請求を請けた事業者側は瑕疵の修補を行います。
③修補が完了した後に、事業者に保険金が支払われます。
注意点として、「瑕疵が発生した事由」によっては、住宅瑕疵担保責任の保険金が支払われない場合もあります。台風、豪雨、火災、落雷などの自然現象により、新築住宅に瑕疵が生じた場合などが代表例です。
住宅を供給した事業者が倒産してしまった場合
万一、住宅事業者が倒産しても補償は受けられる
前項の通り、新築住宅の引渡しを受けて10年以内に瑕疵が見つかった場合には、瑕疵担保責任による修補請求を事業者へ請求することが出来ます。
住宅を供給した事業者は瑕疵担保責任を負っていますので、住宅の取得者から請求された場合には、新築住宅の瑕疵の修補に応じることになります。
それでは、瑕疵が見つかったものの、請求先の事業者がすでに倒産してしまっている場合はどうなるのでしょうか。
住宅の取得者が瑕疵担保責任による修補請求を行おうにも、相手の事業者が存在していない場合は請求することが出来なくなるのでしょうか?
保険会社に直接保険金を請求することが出来る
ご安心ください。仮に事業者が倒産し、瑕疵担保責任による修補が受けられない場合には、住宅の取得者は事業者が保険契約を締結していた保険会社に対して、直接保険金の請求を行うことが出来ます。
本来、住宅瑕疵担保責任保険は新築住宅の瑕疵の修補を行った事業者に保険金が支払われる保険制度なのですが、事業者が倒産している場合などは瑕疵担保責任による修補を事業所が行うことが出来ないため、保険会社から保険金が支払わず、結果、住宅の取得者側の問題は解消されないことになってしまいます。
そのような状況に陥らないための救済措置として、住宅の取得者による保険会社への保険金の請求が直接出来る仕組みになっています。
なお、住宅の取得者が保険会社へ直接請求できる保険金の額は上限があり、「事業者が瑕疵担保責任を負担するべき損害の範囲内」となっています。
最後に
住宅の取得者は新築住宅の引渡しを受けてから10年間は、瑕疵が見つかった場合に住宅を供給した事業者に対して、瑕疵担保責任による修補請求を行うことが出来ます。しかし、かつては事業者の資金力の悪化や事業所の倒産などが原因となり、瑕疵担保責任が果たされず、住宅の取得者が泣き寝入り…のようなケースが発生していました。
そのような事象が起こらないようにするため、新築住宅を供給する事業者に対して、瑕疵担保責任を果たすための資力確保が義務付けられました。事業者が住宅瑕疵担保責任保険で資力を確保する場合、10年間保険に加入しなければなりません。
これにより住宅取得者は、新築住宅の引渡しを受けてから10年間は、住宅瑕疵担保責任保険によって瑕疵による修補を受ける権利を補償されます。皆さんが事業者から新築住宅を安心して取得できるための制度です。ぜひ覚えておいて下さい。